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強度行動障害支援者養成研修とはどんな研修? 目的や研修例を紹介

公開日:2024年7月31日 更新日:2024年10月28日

強度行動障害支援者養成研修とはどんな研修? 目的や研修例を紹介


自分の頭を壁や床に強くぶつける、他人を叩いたり噛み付いたりするなど、日常生活に支障をきたすほどの自傷や他害をしている方は、強度行動障害かもしれません。強度行動障害のある方の支援を行う際には、無理に行動を抑えるのではなく、適切な支援で日常生活を送れるようにすることが大切です。

強度行動障害支援者養成研修では、そのような方の支援を行えるよう、強度行動障害に関する専門的な知識を学べます。

本記事では、強度行動障害支援者養成研修の概要や取得する目的、研修例をご紹介します。研修について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

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強度行動障害って何?

 
強度行動障害とは、自分自身や他人、物を傷つけるなど、周囲の人の健康や暮らしに影響を及ぼす行動を著しく高い頻度で起こしてしまうため、特別に配慮された支援が必要な状態のことをいいます。医学的な診断ではなく、必要な支援を行うために行政や福祉の分野でよく使われている言葉です。
 
強度行動障害の具体的な行動としては、自分の頭を叩き付ける・爪を剥ぐなどの「ひどい自傷」、他人への頭突きや噛み付き・物を壊すなどの「他害」、耐えられないような大声を出す「著しい騒がしさ」、昼夜逆転するといった「睡眠の大きな乱れ」などです。
 
こうした行動をしてしまう原因は、不安や緊張をうまく言葉で伝えられないことが原因だといわれています。周囲の無理解や不適切な関わり方により、幼少の頃に適切な行動を身に付けられなかった「未学習」が原因の方もいれば、何とか自分の気持ちを伝えようとするが、適切な方法で伝えられなくなってしまった「誤学習」が原因の方もいます。
 
※参考:厚生労働省.「強度行動障害の評価基準等に関する調査について報告書」.
 

強度行動障害支援者養成研修とは?

強度行動障害支援者養成研修とは?
 
強度行動障害支援者養成研修とは、強度行動障害のある方の支援者を養成する研修です。強度行動障害のある方が日常生活を送れるよう、研修では障害の特性を学んだり、実際に抱えている課題を体験したりしながら適切な支援を学びます。
 
強度行動障害支援者養成研修を受けるメリットは、専門的な支援方法を学べることです。適切な支援方法を知ることで、より高度なサポートが必要なケースにも円滑に対応できるようになります。また、仕事の幅を広げられるようになれば、キャリアアップも目指せるでしょう。
 

強度行動障害支援者養成研修の内容・期間・受講費用

 
強度行動障害支援者養成研修は、誰でも受けられる研修ではありません。受講を検討している方は、対象者や内容について事前に調べておきましょう。
 
ここからは、強度行動障害支援者養成研修の内容・期間・受講費用をご紹介します。ただし、都道府県や実施する機関、企業によって異なるため、あくまでも目安として参考にしてください。
 

研修内容と研修期間

 
強度行動障害支援者養成研修には基礎研修と実践研修があり、それぞれ研修内容と受講期間が異なります。
 
まずは自身が対象かどうか、どのような研修なのかを知りましょう。
 

基礎研修

 
基礎研修は、障害福祉サービス事業所や特別支援学校で知的障害・精神障害がある方を支援する仕事に就いている方や就く予定の方、障害福祉サービス事業所の連携医療機関に従事している医療従事者などが対象です。
 
研修の内容は、主に下記の通りです。
 
・強度行動障害の基本的理解
・強度行動障害に関する制度
・障害特性の分析や特性に基づいた支援
・チームプレイの必要性
・強度行動障害と虐待防止
 
研修は講義と演習に分かれており、計12時間あります。講義では基本的な知識を、演習では体験を中心に行います。
 
※参考:公益財団法人東京都福祉保健財団.「令和6年度東京都強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)カリキュラム」. 

実践研修

 
実践研修は、障害福祉サービス事業所や特別支援学校で知的障害・精神障害がある方を支援する仕事に就いている方・就く予定の方、障害福祉サービス事業所の連携医療機関に従事している医療従事者などで、基礎研修を修了している方(終了見込みの方も含む)が対象です。
 
研修の内容は、主に下記の通りです。
 
・行動の希望に着目した支援の組み立ての基本
・危機対応、虐待防止
・組織的なアプローチの重要性
・障害特性に基づくアセスメント
・福祉や医療など関係機関との連携
 
実践研修では、強度行動障害への理解をより深めるための内容が多くなっています。研修内容は、基礎研修と同様に講義と演習で、計12時間行います。
 
※参考:公益財団法人東京都福祉保健財団.「令和6年度東京都強度行動障害支援者養成研修(実践研修)カリキュラム」.
 

受講費用

 
強度行動障害支援者養成研修の受講費用は、実施する団体によって異なります。中には5,000円前後で済むところもありますが、一般的には基礎研修・実践研修いずれも2万円前後になっています。
 
前述した通り、どこで研修を受けるのかによって大きく費用が変わる可能性があるため、自分が受ける実施団体の情報をよく確認しましょう。
 

強度行動障害支援者養成研修を受ける際の注意点

 
強度行動障害支援者養成研修を受ける際には、いくつか注意点があります。特に研修の受講期間に関しては、期限を過ぎてしまうと途中まで受けていた研修が無駄になってしまうため、受講前にしっかり確認が必要です。
 
ここからは、強度行動障害支援者養成研修を受ける際の注意点をご説明します。
 

基礎研修の注意点

 
強度行動障害支援者養成研修の基礎研修は、受講期間が原則1カ月以内です。2日に分けて行われるため、第1日目の研修を終えたら、1カ月以内に第2日目の研修を受講しましょう。
 
ただし、実施団体によっては、やむを得ない理由がある場合にのみ猶予期間を設けている場合があります。自身が受講する団体がどのようなルールを設けているのか、事前に確認しておくと万が一のときに安心です。
 

実践研修の注意点

 
強度行動障害支援者養成研修の実践研修は、受講期間が原則2カ月以内です。基礎研修と同様に、2日かけて行われるため、第1日目を終えたら期限内に第2日目を受講しましょう。
 
実践研修でも、やむを得ない事情があれば猶予期間を設けてもらえる場合があります。スケジュールに不安がある方は、受講予定の実施団体に問い合わせてください。
 

強度行動障害支援者養成研修は就職に有利

 
強度行動障害支援者養成研修は、就職に有利になる可能性があります。理由は、強度行動障害支援者養成研修の修了者の雇用が加算要件の対象となるため、施設の中には積極的に修了者を採用したいところもあるからです。
 
加算要件に強度行動障害支援者養成研修の修了者の雇用が含まれている障害福祉サービス施設・事業所は、障害者支援施設、短期入所(ショートステイ)、共同生活援助(グループホーム)、児童発達支援・放課後等デイサービスなどです。
 
上記のような施設へ就職・転職を考えている方は、研修を受けておくと有利になるかもしれません。
 
社会人からキャリアチェンジで保育士へ
 

各施設の加算内容

 
強度行動障害支援者養成研修に関係する加算は、施設により内容が異なります。
 
ここからは、各施設の加算内容をご説明します。
 

施設入所で支援をした場合の加算

 
障害者支援施設に入所するのは、夜間・休日にも支援が必要な方や、自立訓練・就労支援などが必要な方、通所して訓練を受けるのが難しい方などです。
 
強度行動障害のある方が入所している施設では、強度行動障害支援者養成研修の実践研修の修了者を配置後、体制を整えている旨を届出し、支援計画シートなどを作成した場合、7単位/日が加算されます。
 
また、実践研修の修了者の作成した支援計画シートなどに基づき、基礎研修の修了者が強度行動障害を有するものに対して夜間に支援を行った場合は、180単位/日が加算されます。なお、基礎研修の修了者1人につき、利用者5名まで算定が可能です。
 

短期入所で支援した場合の加算

 
短期入所(ショートステイ)とは、一時的に施設に入所するサービスのことです。この施設で重度行動障害のある方に対して支援を行った場合は、10単位/日が加算されます。
 

共同生活援助で支援をした場合の加算

 
共同生活援助(グループホーム)とは、10人以下で共同生活をするサービスのことです。この施設での加算要件は、いくつかあります。
 
まず、「サービス責任者または生活支援人のうち、1名以上が実践研修の修了者である」「生活支援人のうち、20%以上が基礎研修の修了者である」などの条件を満たすと、360単位/日が加算されます。
 
また、強度行動障害支援者養成研修の修了者が配置されている共同生活援助を、強度行動障害の方が地域移行を目的として体験利用した場合の加算は、400単位/日です。
 

児童発達支援・放課後等デイサービス

 
児童発達支援・放課後等デイサービスとは、心身に障害または発達の遅れがある児童などが利用するサービスのことです。定員10人以下のこの施設では、「児童指導員等加配加算」と「強度行動障害児支援加算」があります。
 
児童指導員等加配加算は、基準人員を満たした上で、さらに人員を配置した場合に算定できるものです。算定額は、プラスで配置された従業員の雇用形態(常勤・非常勤)や経験年数によって変わります。
 
例えば、常勤専従の勤務形態で勤務経験が5年以上ある児童指導員を配置した場合は187単位/日の加算ですが、常勤専従で勤務経験が5年未満の児童指導員を配置した場合は152単位/日の加算です。なお、児童指導員ではない基礎研修を終了した従業員を加配したときの加算は、年数を問わず90単位/日です。
一方で、強度行動障害児支援加算では、児童発達支援・放課後等デイサービスで、基礎研修を修了した職員を配置後、強度行動障害のある子ども(児基準20点以上)に対して支援計画を作成し、当該計画に基づき支援を行った場合に算定できます。加算は200単位/日で、加算開始から90日以内の期間は、さらに500単位/日が追加されます。
 
また、児童発達支援・放課後等デイサービスは、重症心身障害児など、著しく重度の障害児に対して支援を行った場合に加算される「個別サポート加算(Ⅰ)」も対象です。強度行動障害支援者養成研修の修了者は、この加算の対象者にもなっています。
 

強度行動障害支援者養成研修はこんな方におすすめ

強度行動障害支援者養成研修はこんな方におすすめ
 
強度行動障害支援者養成研修は強度行動障害のある方に対する支援方法を学びたい方や、障害福祉系の仕事でキャリアアップを目指したい方、転職を考えている方におすすめです。
 
強度行動障害がある方は、自傷や他害があることから、施設への入所を断られたり、不適切な支援を受けたりするケースもあります。そのため、障害特性をきちんと理解し、適切な支援を行える強度行動障害支援者養成研修の修了者は、非常に重宝されます。高度な支援を行えるスキルがあると、自信にもつながるでしょう。
 

強度行動障害支援者養成研修にチャレンジしよう!

 
強度行動障害とは、ひどい自傷や他害など周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動を著しく高い頻度で起こしてしまうため、特別に配慮された支援が必要な状態のことを指します。この障害がある方を支援する人を育てるために行われているのが、強度行動障害支援者養成研修です。
 
強度行動障害支援者養成研修には基礎研修と実践研修があり、基礎研修では強度行動障害に関する基本的な知識や支援スキルを、実践研修では障害特性に基づくアセスメントや組織的な支援方法などを学びます。専門的な知識を付けることで、より高度なサポートが必要なケースに対応できるようになるため、仕事の幅を広げたり、キャリアアップにつなげたりすることが可能です。
 
日本児童教育専門学校では、保育所・幼稚園・障害児施設など、就職先の幅を広げられる多様なカリキュラムを用意しています。将来、保育・福祉分野で活躍したいと考えている方は、日本児童教育専門学校のオープンキャンパスや資料請求をご利用ください。
 

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