保育士コラム
保育士コラム
公開日:2020年10月30日 更新日:2024年2月28日
幼稚園と保育士はそっくりな仕事だと思われがちですが、中身を紐解いていくと、実は全く異なる職種であることがわかります。
本記事では、それぞれの資格の定義・仕事・取得方法といった、あらゆる視点から見た違いをご紹介します。
目次
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幼稚園教諭と保育士では、資格の管轄や法律上における大きな違いがあります。
幼稚園教諭と保育士の定義を解説いたします。
幼稚園教諭とは、教育職員免許法の基準に則り、文部科学省が管轄する免許状を保有する教育職員です。
なお平成21年4月1日より「教員免許更新制」が導入されており、幼稚園教諭を含むすべての教員免許において一定の有効期間が決められています。[注1]そのため基本的には、免許継続に向けた更新を求められる点が大きな特徴です。
[注1]文部科学省:教員免許更新制
保育士とは、児童福祉法の基準に則り、厚生労働省が交付する保育士登録証を保有している者を指します。
保育士は資格の更新が不要で、保育士登録簿に登録されている限り有効です。
前述からもわかるとおり、幼稚園教諭と保育士では適用されている法律が大きく異なります。幼稚園教諭は「教育」、保育士は「福祉」というように、それぞれ求められている役割による差があります。
ここでは業務上での具体的な違いを解説いたします。
文部科学省が定めるところによると、幼稚園とは小学校以降における学習や生活の基礎を作る場とされています。[注2]そのため幼稚園教諭は、幼稚園教育要領に沿った教育課程を行なわなければなりません。
そこで幼稚園では、子どもたちを預かって日常的なお世話や遊びなどをするほか、各園のカリキュラムに沿って学習活動をします。内容についてはさまざまですが、たとえば、お遊戯・工作・文字の読み書き・計算・英語・リトミックなどがあり、学習のサポートをするのが幼稚園教諭の役目です。
なお幼稚園教育要領において、1日の教育時間は4時間と決められています。ですからスケジュールとしては、13~14時前後で降園するケースがほとんどです。
子どもたちの帰宅後から退勤時間までは、事務処理・各種行事や教材の準備・職員会議といった業務を行います。
夕方までの延長保育に対応している幼稚園であれば、お預かりしている子どもたちの保育当番になる場合もあります。
厚生労働省が定めるところによると、保育所とは子どもたちの福祉を守る健全な生活の場とされています。[注3]子どもたちの心身の発達をサポートすると共に、保護者の子育て支援にも大きく貢献しています。
このように福祉の意味合いが強く、子どもたちが過ごしやすい環境の提供・基本的な社会性や生活習慣の指導が保育士の主な役割です。
0歳や1歳といった乳児の保育にもあたるので、基本的には身の回りのお世話・遊び・お散歩などがメインの業務となります。
さらに幼稚園との大きな違いの1つは、スケジュールです。保育所では朝から夕方まで子どもを預かるので、開園時間が長く、お昼寝の時間もあります。そのためお昼寝の時間などに職員同士で交替しながら、保育以外の事務作業などの業務を進めます。
また保育所によってはクラス分けせず、さまざまな年齢が混在した合同保育(異年齢保育)を行なっているケースもあります。この点においても、幼稚園とは異なります。
[注3]厚生労働省:保育所利用の仕組み
幼稚園教諭と保育士では資格の取得ルートの違いを解説いたします。
教育職員免許法によると幼稚園教諭の教員免許状については、短大・大学・大学院のいずれかで必要な単位を修了し、卒業すると同時に取得できます。[注4]
なお大学卒業で一種・短大卒業で二種・大学院修士課程修了で専修、というように学校別で種類分けされています。この種類によって職務を制限されることはほとんどありませんが、幼稚園によっては給料や待遇などに差が出るケースもあります
また、法規制上の制約があるため、二種免許状の幼稚園教諭は園長にはなれません。将来、園長になりたいと考えている場合は、一種免許状を取得する必要があります。
保育士の資格を取るには、幼稚園教諭と同様に学校の卒業、もしくは試験に合格するという2つのパターンがあります。[注3]
学校を卒業して取得する場合は、児童福祉法で定める指定保育士養成施設(大学・短大・専修学校など)に通い、必要な単位を取得します。なお試験を受けて取得する場合、まずは所定の各種受験資格が必要です。
具体的には、以下のどれかに該当することが求められます。
幼稚園教諭・保育士の両方の養成課程をもつ学校が存在します。双方に必要な単位を修了することで、卒業と同時にどちらについても取得可能です。
本校、日本児童教育専門学校は、卒業と同時に以下資格が取得できます。
働きながら資格取得を目指す方、別業種から保育士を目指す方などさまざまな方に合わせてじっくり学べる3年コース・最短2年コースや昼間コース・夜間コースなどをご用意しております。
実は幼稚園教諭と保育士、2つの資格が必要な現場もあります。それが平成18年に運用スタートした、幼稚園と保育所の双方の機能を持つ「認定こども園」です。
この認定こども園には運営方法によって4つの種類がありますが、なかでも幼保連携型については、幼稚園教諭・保育士のどちらの資格も有する保育教諭を配置する規定があります。
ただし令和6年度末までの期間限定で、幼稚園教諭と保育士のいずれかを取得していれば保育教諭として働くことが認められています。
既にいずれかの資格を保有している場合には、以下3つのような特例制度を使って幼稚園教諭と保育士の併有も目指せます。
保育士の実務経験3年以上かつ勤務時間4320時間以上であれば、以下の条件を満たすことで幼稚園教諭の免許状が授与されます。
なお学士の学位があれば一種、それ以外であれば二種の幼稚園教諭免許となります。
幼稚園での実務経験3年以上かつ勤務時間4320時間以上であれば、以下の条件を満たすことで保育士の資格を取得できます。
なお受験申請期間については、年4回設定されています。
保育士から幼稚園教諭の場合、独立行政法人教職員支援機構による、教員資格認定試験に合格することで幼稚園教諭の二種免許状を取得することも可能です。
また幼稚園教諭から保育士の場合は、保育士試験(一部科目免除)に合格することで資格が取得可能です。
認定こども園の運用は国の子育て支援政策として進められているものなので、今後の需要を考えるのであれば、両方の資格を取得しておくのもひとつの手でしょう。
幼稚園教諭と保育士の違いについて解説しましたが、どの資格を目指すかは、ご自身が望む働き方によって決まります。
具体的に、それぞれどのような方に向いているかをみていきましょう。
幼稚園教諭には、学校教育として子どもたちの学習をサポートする役目があります。楽しく遊びながら学べる指導カリキュラムが組んだり、クラスの活動をまとめたり、教育者の立場で活躍したい方に向いているでしょう。
基本的には1つのクラスを受け持つことになるため、担任として子どもたちを団結させられるやりがいもあります。
また芸術・音楽・運動などを取り入れたさまざまなプログラムができるので、情操教育に力を入れたい方にぴったりです。
保育所には、子どもたちの安全で健やかな毎日を支えると共に、忙しい親御さんたちをサポートする役目もあります。
必然的に園児たちと過ごす時間は非常に濃密であり、なおかつ生活そのものに大きく関われる仕事です。
そのため、子どもたちとの距離感を重視する方に向いているでしょう。また0歳や1歳といった乳児のお世話もできるため、さまざまな年齢の子どもに接することができます。
保育士の資格があれば、児童養護施設や託児所などでも働けるので、幅広く活躍したい方にもぴったりです。
勤める施設にもよりますが、1日8時間の勤務が基本です。朝7時頃から夕方18時頃までの延長保育に対応している保育園では、シフトを組んで交替で勤務する場合もあります。午後には子どもたちに昼寝をさせて、その間に保育士は会議や連絡帳への記入などを行います。
幼稚園教諭の勤務スケジュール・仕事内容
幼稚園の開園時間は、標準4時間と定められています。一般的な開園時間は9時から14時頃で、それ以外の時間帯に幼稚園教諭は会議や事務作業、イベントの準備などを行います。
保育士のメリット
保育士は、0歳から小学校就学前までの幅広い年齢の子どもと関われます。また、子どもの福祉関連のさまざまな施設で需要があり、保育園以外にも活躍の場が多いこともメリットにあげられるでしょう。ベビーシッターや保育ママなど、資格を活かしてフリーでも働けます。
幼稚園教諭は工作や音楽、お遊戯などを通じて、幼児の情操教育に携われます。幼稚園の夏休みや冬休みには、研修やイベントの準備などを除き、長期休暇がとりやすいというメリットもあります。
保育士としてのキャリアアップ
保育士になっておおむね3年以上経過すると、キャリアアップ研修が受講できます。乳幼児の保育や食育、保護者支援といった、リーダー的な役割を担う職員の育成を目的とする研修です。受講後はクラス担任、クラス業務責任者、主任を経て、園長へのキャリアアップも可能です。
幼稚園教諭としてのキャリアアップ
幼稚園教諭は、一般教諭から主任、副園長を経て、園長になるのが、基本的なキャリアアップです。
幼稚園教諭があれば保育士もできる・保育士があれば幼稚園教諭ができるといったように、どちらかがどちらかを代用できるものではありません。将来ご自身がどのように子どもに関わっていきたいか、きちんと目標を立てて目指すべき仕事を選ぶのがベストではないでしょうか。
幼稚園教諭と保育士の双方共にも子どもに関わる仕事ですが、資格取得方法から業務範囲まで大きく異なる別職種です。
幼稚園教諭があれば保育士もできる・保育士があれば幼稚園教諭ができるといったように、どちらかがどちらかを代用できるものではありません。将来ご自身がどのように子どもに関わっていきたいか、きちんと目標を立てて目指すべき仕事を選ぶのがベストではないでしょうか。
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