保育士コラム
保育士コラム
公開日:2023年1月13日 更新日:2024年2月16日
慢性的な保育士不足が続き、今なお深刻な社会問題となっています。都道府県に登録されている保育士は男女合わせて約160万人いるにもかかわらず、どうして保育士不足が続くのでしょうか。
本記事では、保育士不足の現状や原因、解消するために国が力を入れている対策について解説します。ぜひ最後まで読んで、参考にしてみてください。
出典:厚生労働省「保育士登録者数等(男女別)」
目次
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「保育士不足」とはよく聞くものの、どのくらい保育士が足りていないのか詳しくご存知ではない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは保育士不足の現状について、数字を用いながら詳しくご説明します。
令和4年4月時点の保育士の有効求人倍率は1.98倍です。全職種平均の1.17倍と比べると保育士の求人倍率は0.81倍も高くなっており、保育士を探している保育施設は、現在もたくさんあるという状況が伺えます。
また保育士の有効求人倍率は、9割を超える都道府県で1倍を超えています。限定された地域で保育士が不足しているのではなく、全国的に保育士不足になっているのです。
出典:厚生労働省「保育士の有効求人倍率の推移」
出典:厚生労働省「保育分野における人材不足の現状①」
保育士不足は、潜在保育士の存在と早期離職の2点が大きな原因となっています。
潜在保育士とは、保育士の資格を取得しているものの、保育士として働いていない人のことです。保育士養成施設を卒業した人でも、保育所以外に就職した人は全体の5割近くに留まります。
また退職した保育士のうち、保育士として再就職を希望しない人の約4割が勤続年数5年未満です。就職したとしても早期離職する人が多く、5年以上保育士を続けている人が少ないというのが現状です。
出典:厚生労働省「保育分野における人材不足の現状②」
保育士にならない、または保育士として再就職を希望しない保育士が多くなっている原因には、給料の低さや労働環境、仕事へのプレッシャーなどさまざまなものが挙げられます。
ここからは、保育士不足が起こる具体的な原因と対策について説明していきます。
保育士が再就職しない理由の一つに、賃金の低さが挙げられます。賃金構造基本統計調査によると、令和3年度の保育士の平均月料は25万6,500円。賞与や手当などその他の給付額の平均は74万4,000円です。
令和2年度は平均月給が24万9,800円、賞与や手当などその他の給付額の平均が74万7,400円だったため、給料は少しずつ増加傾向にあります。
ただし他の業種と比べるとまだまだ賃金は低いため、自分が希望する給料と保育士の給料が見合わず、他の業種を選んでいる人が多くなっているのでしょう。
保育士不足を解消するためには、少なくとも他の業種と同じくらいまで給料を上げる必要があると考えられます。
出典:賃金構造基本統計調査
・令和3年
職種(小分類)性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
・令和2年
職種(小分類)性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
保育所の開所時間は1日11時間、保育時間は1日8時間が原則とされています。そのため多くの保育所では、朝7時に出勤する早番や、閉所時間まで勤務する遅番があります。働く時間帯が希望と合わない点や、シフト制で休日を自由に選べない点を負担に感じる保育士も少なくありません。
また、書類を書いたり保育の準備をしたりと業務も多岐に渡るため、長時間労働になることも多々あります。子どもたちと一緒のときは常に動き回り、子どもがいない時間の業務量も多いことから、体力面で負担を感じる保育士もいます。
保育以外の業務負担が軽減され、より専門的な保育業務に専念できる環境が整うと、保育士がもっと働きやすくなるでしょう。
保育士や職員を多めに配置するなど、気負いすぎずに余裕を持って保育できる環境も、働き続ける上では大切な要素といえるでしょう。
保育士は、子どもの命を預かる仕事です。好奇心旺盛で、まだ自分で意志表示できないような小さな子どもも預かるため、目を離せない緊張感もあります。
また事故や窒息が原因ではなく、眠っている間に乳幼児が突然死してしまう「乳幼児突然死症候群」が起こる可能性もゼロではありません。
さらには、保育業務は常に命を守るプレッシャーがかかるため、そのプレッシャーに耐えられない保育士もいます。「転んでケガをさせないようにしないと」「目を離した隙に何か起きたらどうしよう」と、責任を強く感じてしまうからです。保護者から信頼してもらえるのは非常にうれしいことですが、「あの先生なら大丈夫」という強い信頼感がプレッシャーになってしまう保育士も少なくありません。
保育士は、子どもに関わるだけの仕事ではありません。日々の保育をスムーズに進めるためには、保育士同士の連携も大切です。また子どもの成長の様子や気になることなど、保護者に伝えなければならないこともたくさんあります。
保育士同士や保護者など、多様な人と関わるため、人間関係に悩んでしまうこともあるでしょう。実際に保育士としての就業を希望しない理由の中には、保護者との関係が難しいと答えた人が一定数度います。
良好な人間関係を築くための配慮やフォローも、欠かすことができない大切な要素の一つでしょう。
慢性的な保育士不足を解消するために、国は保育士や保育施設に対してさまざまな対策を取り入れています。ここからは、国が実施している対策について具体的に説明していきます。
令和3年度から新子育て安心プランが導入されました。保育体制の整備や地域の子育て資源を活用しやすくすることで、待機児童の解消を目指す政策です。令和6年度末までに、約14万人分の保育の受け皿を確保できるよう計画が立てられています。
具体的な内容としては、自治体への設備費や施設改修費といった補助費の向上、保育コンシェルジュによる相談支援の拡充などが挙げられます。
保育施設としては、空きスペースを活用して小規模保育や預かり保育が行いやすくなるといったメリットがあるでしょう。保護者にとっても、ベビーシッターの利用や育児休業の取得に対するハードルが低くなる点がメリットとなるはずです。
また保育所では各クラスに常勤保育士1名が必要ですが、待機児童がいる市町村では、代わりとして2名の短時間保育士でも保育可能となりました。実際のところ現場の声は賛否両論ありますが、国としては短時間保育士が活躍できる環境にしたいという狙いがあります。
出典:厚生労働省「新子育て安心プラン」について」
待機児童を解消するために必要な保育士数の確保を目指して取り入れたれたのが、保育士確保プランです。主に4本の柱を掲げており、①人材育成、②就業継続支援、③再就職支援、④働く職場の環境改善、に力を入れて取り組んでいます。
<施策①人材育成>
保育所などで保育士業務に従事しようとしている人に対し、修学資金を貸し付ける保育士修学資金貸付事業の他、専門性の向上のために学生への実践的実習や現役保育士への研修などを行っています。指定の条件を満たした保育士がキャリアアップ研修を受けると、基本給アップや手当てが支給されるようになりました。
また、幼稚園教諭の免許状を保持している人が保育士資格を取得する際に免除科目を設けるなど、保育士資格を取得しやすくする特例制度もあります。
<施策②就業継続支援>
離職防止のためにさまざまな研修を行っています。例えば、新人保育士対象研修、保育の質を確保するための研修などです。
その他にも、労働環境整備や就業継続支援のための助成金を周知する活動も行っています。
<施策③再就職支援>
潜在保育士に対して就業先の斡旋(あっせん)や相談支援、再就職前の実技研修を行っています。また、ハローワークと都道府県などが連携することで、より充実した就職支援を目指すプロジェクトなどもあります。
<施策④働く職場の環境改善>
雇用管理・改善を図るため、管理者を対象とした研修などを行っています。加えて好事例集や雇用管理マニュアルの提供、雇用管理状況把握のためのチェックリストの作成により、良好な施設運営ができるようサポートしています。
また業務をICT化することで効率や生産性を向上し、保育士の業務負担の軽減を目指す取り組みなどもあります。
社会人からキャリアチェンジで保育士へ
出典:厚生労働省「「保育士確保プラン」の公表」
保育士が不足する原因は、潜在保育士が多いことと早期離職する人が多いことの2点です。保育士にならない、あるいは再就職しないという人の多くは、給料の低さや人間関係の悩み、労働環境への負担を感じています。
これらの問題を解消するために、保育士の処遇や給与、労働環境の改善、業務負担の軽減など、国もさまざまな施策に取り組んでいます。今後は、もっと保育士が働きやすい環境になっていくでしょう。
日本児童教育専門学校は、保育士になりたいと考えている人を応援します。保育士資格はもちろん、幼稚園教諭二種免許状や認定絵本士の資格も取得可能です。本校では保育の知識に加え、現場で役立つさまざまなスキルを身につけられます。
ぜひ日本児童教育専門学校で、私たちと一緒に素敵な保育士を目指していきましょう。
日本児童教育専門学校Japan Juvenile Education College
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