保育士コラム

保育実習における目標とは?立て方のポイントや書き方の例をご紹介

保育士を目指す専門学校生や大学生にとって、初めての保育実習は大きな挑戦です。特に実習目標の設定方法について悩んでいる方も多いことでしょう。
「どんな目標を立てたらいいのか全くわからない」「漠然とした目標しか思い浮かばなくて、これで大丈夫なのか不安」といった声をよく耳にします。
この記事では、保育実習における目標の意味や設定が必要な理由から始まり、効果的な目標を立てる際のポイントを詳しく解説していきます。
さらに、実習の時期別に具体的な目標例も紹介しますので、あなたの状況に合わせて参考にしてください。
保育実習の目標設定は、将来の保育士としての基盤を築く重要なステップです。適切な目標を持つことで、実習期間を有意義に過ごし、子どもたちとの関わりを通じて大きく成長できるはずです。
目次
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保育実習における目標とは
保育実習における目標とは、実習期間中に達成したい学習内容や身につけたい技能を明確にした指針のことです。
単なる「頑張ります」という意気込みではなく、具体的で測定可能な成果を定めた学習計画といえるでしょう。
保育実習では実践的な経験を通じて保育技術を習得し、子どもたちとの関わり方を学んでいきます。
そのため目標設定は、限られた実習期間を最大限に活用するための重要な要素となります。’実習指導者や担当教員も、学生の目標を把握することで適切な指導やフィードバックを提供できるのです。
保育実習で目標設定が必要な理由
保育実習において目標設定が欠かせない理由は、学習効果を最大化し、自分自身の成長を促進するためです。
具体的な3つの理由について詳しく説明していきます。
学びの方向性を明確にできる
目標設定がない場合、実習生は「今日は何をすればいいのだろう」「どこに注目して子どもたちを観察すればいいのか」といった迷いが生じがちです。
このような状況では、貴重な実習体験が表面的な経験にとどまってしまう可能性があります。
一方で具体的な目標があると、実習における学習ポイントが整理されます。このように目標が決まることで、実習中に何に焦点を当てて学ぶべきかがはっきりとしてきます。
実習指導者との面談でも「○○について学びたいのですが、どのような場面で実践できますか」といった具体的な相談ができるでしょう。
このように目標設定は、実習期間を通じて一貫した学習テーマを持ち続けるための重要な指針となります。
達成感・自信を得られる
目標を立てる最大のメリットは、自分の成長を客観的に確認できる点にあります。
「子どもたちと積極的にコミュニケーションを取る」という漠然とした思いではなく、「毎日3人以上の子どもと個別に会話し、名前を覚えて声をかける」といった具体的な目標があると、日々の実習で「今日は5人の子どもと話せた」「昨日覚えた名前で呼びかけたら笑顔を見せてくれた」という小さな成功を実感できるでしょう。
実習期間中は慣れない環境や業務に戸惑うことも多く、「自分にできるのだろうか」という不安を感じがちです。
しかし、設定した目標を一つずつクリアしていくプロセスを通じて、着実な進歩を感じられます。
さらに、目標達成の積み重ねは保育士としての自信構築に直結します。実習指導者からの「目標に向かって頑張っていますね」という評価や、子どもたちからの「また一緒に遊ぼう」という反応は、将来への確信を深める貴重な体験となるでしょう。
成長を実感しやすい
保育実習で目標設定を行うことで、自分自身の成長を客観的に把握しやすくなります。
明確な目標があると、実習開始時点と終了時点での変化を具体的に比較でき、達成できた内容を振り返ることで確実な成長実感を得られるのです。
目標設定なしに実習を進めた場合、「なんとなく頑張った」「子どもたちと楽しく過ごせた」という漠然とした感想で終わってしまうことがあります。
しかし、「3歳児クラスの子どもたちと信頼関係を築き、名前を呼んでもらえるようになる」といった具体的な目標を設定しておくと、実際に子どもから「○○先生!」と呼ばれた瞬間に明確な成長を実感できるでしょう。
このように目標設定は、実習での学びを可視化し、確実な成長実感を得るための重要なツールなのです。
保育実習で目標を立てる際のポイント
効果的な保育実習の目標設定には、押さえておくべき3つの重要なポイントがあります。
それぞれのポイントについて詳しく説明していきます。
子どもの年齢や発達段階を意識する
保育実習の目標設定で最も重要なポイントは、子どもの年齢や発達段階に応じた目標を立てることです。
同じ保育園でも、0歳児クラスと5歳児クラスでは必要な知識や技術が大きく異なるため、実習先のクラスに合わせた目標設定が欠かせません。
子どもの発達には一定の順序があり、各年齢で身体的・認知的・社会的発達の特徴が違います。
例えば、0~1歳児では基本的な生活習慣の援助や安全な環境づくりが中心となりますが、3~5歳児では集団活動の指導や個性を活かした関わり方が重要になってくるでしょう。
さらに、同じ年齢でも個人差があることを忘れてはいけません。発達の早い子どもや支援が必要な子どもなど、一人ひとりの特性を観察し、それに応じた関わり方を学ぶことも大切な目標となります。
具体的で測定可能な表現にする
保育実習の目標設定において最も重要なポイントは、曖昧な表現を避けて具体的で測定可能な言葉を使うことです。
これにより実習期間中の達成度を客観的に評価でき、成長を実感しやすくなります。
「頑張ります」「努力します」といった抽象的な表現では、実際に何をどの程度達成すればよいかが分からないためです。
一方で測定可能な目標があると、実習生自身も達成状況を把握しやすく、実習指導者との評価も共有できるでしょう。
このような測定可能な目標設定により、実習での学習成果が明確になります。
「今日は手遊びを2つ覚えたから、あと3つ頑張ろう」「子どもへの声かけを12回できた」といったように、日々の達成感も得られやすくなるでしょう。
自分の課題や成長目標と結びつける
保育実習の目標設定において最も重要なのは、自分の課題や成長目標と結びつけることです。
これにより実習体験がより深い学びとなり、将来の保育士としての成長が加速します。
自分の課題と結びつけた目標設定が効果的な理由は、個人の弱点や伸ばしたい分野に焦点を当てることで、集中的な学習と改善が可能になるからです。
また、自分自身の成長への意欲が高まり、実習に対するモチベーションも向上していくでしょう。
また、将来の保育士像と関連付けることも効果的です。
「子どもの気持ちに寄り添える保育士になりたい」という成長目標があるなら、「子どもが困っている場面で感情を受け止める声かけを実践し、その反応を観察記録する」という実習目標を設定できるでしょう。
重要なのは、現在の自分と目指したい保育士の姿のギャップを埋めるための具体的なアクションとして目標を設定することです。
このように個人の課題と成長願望を実習目標に落とし込むことで、実習期間が自分自身の弱点克服と理想実現のための貴重な機会となります。
実習の時期別の目標例
保育実習では、実習前の準備段階から実習後期まで、それぞれの時期に応じた適切な目標設定が大切です。
時期別の具体的な目標例について詳しく説明していきます。
実習前の目標
実習前の目標は、実習への心構えと基礎的な準備を整えることが最も重要です。実習が始まる前に明確な目標を設定することで、現場に入った時にスムーズに学習を進められるでしょう。
実習前に設定すべき具体的な目標例をご紹介します。
知識・理論の準備
- 実習先の年齢に応じた発達段階の特徴を理解する
- 保育所保育指針や幼稚園教育要領の該当部分を復習する
- 子どもの安全管理や衛生管理の基本を確認する
技術・実践の準備
- 手遊び歌を5つ以上覚えて練習する
- 絵本の読み聞かせの基本技術を身につける
- 基本的な保育技術(おむつ交換、着替えなど)の手順を確認する
心構え・姿勢の準備
- 実習に対する自分の課題と期待を整理する
- 積極的に質問し、指導を素直に受け入れる姿勢を身につける
- 子どもたちとの関わりを楽しみながら学ぶ気持ちを持つ
実習初期の目標
実習初期は環境に慣れることと基本的な観察力を身につけることが最優先となります。この時期は新しい環境への適応と、保育現場の実際を理解することに集中しましょう。
実習が始まったばかりの段階では、まず保育園や幼稚園の一日の流れを把握することが重要です。
子どもたちの生活リズムや園のルール、保育者の動きを観察し、現場の雰囲気に慣れることから始めてください。
焦って積極的に関わろうとするよりも、じっくりと観察する姿勢を大切にすることで、後の実習期間での学びがより深くなるでしょう。
実習初期に設定すべき具体的な目標例をご紹介します。
環境適応に関する目標
- 園の一日の流れを理解し、時間配分を把握する
- 職員室や保育室、園庭などの施設配置を覚え、スムーズに移動できるようになる
- 子どもたちの名前を覚え、一人ひとりの顔と名前を一致させる
観察スキルに関する目標
- 子どもの遊びの様子を詳しく観察し、実習日誌に具体的な行動を記録する
- 保育者の声かけや援助方法を観察し、年齢に応じた関わり方の違いを理解する
- 安全管理のポイントを観察し、事故防止の配慮事項を学ぶ
実習初期は「完璧にできなくても大丈夫」という気持ちを持つことも大切です。観察→理解→実践という段階的なアプローチで進めることで、確実にスキルアップできます。
実習中期の目標
実習中期は環境や子どもたちに慣れてきた段階で、より積極的な関わりや実践的なスキル向上を目指す時期です。
初期で築いた基礎をもとに、保育者としての専門性を高める目標設定が重要になります。
具体的な実習中期の目標例を見てみましょう。
保育技術・実践面の目標
- 朝の会や帰りの会で手遊びや絵本の読み聞かせを1回ずつ担当し、子どもたちの反応を観察する
- 製作活動で個別支援が必要な子ども3名に対して、発達段階に応じた援助方法を実践する
- 給食時間に食事マナーを教える声かけを10回以上行い、効果的な伝え方を身につける
コミュニケーション・関係構築の目標
- 人見知りをする子ども2名と信頼関係を築き、自然な笑顔を引き出せるようになる
- 子ども同士のトラブル場面に3回以上立ち会い、仲裁や問題解決のサポート方法を学ぶ
- 保育者間の連携を意識し、引き継ぎ事項を正確に報告・共有できるようになる
実習中期では理論と実践の結びつきを強く意識した目標設定が大切です。
「教科書で学んだ○○理論を実際の子どもの行動で確認し、適切な関わり方を見つける」といった学習目標も効果的でしょう。
実習後期の目標
実習後期の目標は、それまでの経験を活かして実践力を高め、保育士としての総合的な力を身につける段階です。
前期・中期で学んだ知識や技術を統合し、より主体的で創造的な保育実践に挑戦することが求められます。
実習後期に設定すべき具体的な目標例を見てみましょう。
主体的な保育実践の目標
- 週に1回以上、自分で企画した活動プログラムを実施し、子どもたちの反応を分析する
- クラス全体をまとめる場面で、指導者の補助なしに進行を担当する
- 個々の子どもの特性に応じた個別支援計画を3名分作成し、実践する
課題解決・応用力の目標
- 子ども同士のトラブル発生時に、仲裁から解決まで一連の対応を独力で行う
- 保護者からの相談に対して適切な情報提供と共感的な対応ができるようになる
- 実習日誌に毎日3つ以上の改善提案を記録し、翌日の保育で実践する
総合的な専門性向上の目標
- 年間保育計画と月案・週案の関連性を理解し、具体的な活動提案を5つ以上行う
- 他クラスとの連携活動を企画し、異年齢交流を促進する取り組みを実施する
実習後期では実践的な応用力と創造性を重視した目標設定が効果的です。
「教えてもらう」段階から「自ら考えて行動する」段階への転換を意識し、保育士として働き始めた時にすぐに活かせるスキルの習得を目指しましょう。
まとめ
保育実習における目標設定は、あなたの保育士としての成長を大きく左右する重要な要素です。
また、実習前・初期・中期・後期という時期別のアプローチで、段階的にスキルアップを図ることの大切さもご紹介しました。
最初は観察や基本的なコミュニケーションから始まり、徐々に主体的な関わりや専門的な知識の実践へと発展させていく流れです。
これらの知識を活かして、ぜひあなたらしい目標を設定してください。
実習は不安もありますが、明確な目標があることで必ず充実した学びの時間になるでしょう。
子どもたちとの関わりを通じて得られる経験は、将来の保育士人生における貴重な財産となります。目標を胸に、実習での成長を楽しみながら取り組んでくださいね。

日本児童教育専門学校 講師
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