保育士コラム
保育士コラム
公開日:2020年1月31日 更新日:2023年1月13日
保育所保育指針の内容が平成29年3月に改定され、平成30年4月より施行されています。この改定において、「全体的な計画」の作成というものが新たに示されました。
「全体的な計画」は、従来の「保育課程」とはどう違うのか、この記事では詳しく解説します。
目次
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「全体的な計画」とは、旧「保育課程」に新しい視点を加えて内容をより充実させたものです。現在はひと昔前と比べると、乳児から保育所へ入園するというケースが増加しています。そのため、かつては地域内や家庭内で自然と身につけていた生活の知恵、人間関係の構築などについて、保育園側が意識的に取り組むことが求められるようになりました。
1歳未満の乳児期から、1~3歳の幼児期、それが終わるまでに子どもがどういうふうに育ってほしいのか、その育ってほしい姿を意識して年間を通した指導計画なども立てる必要性があります。
単にその時期に何を教えるのかという内容だけでなく、年間計画なども含めて考え、保育園での乳幼児期の学びをもとに、幼稚園入園などにもスムーズに対応できる学びの連続性を重要視しています。
従来の「保育課程」よりももっと包括的な学びを意識した「全体的な計画」に変わることになったのです。
改定後の保育所保育指針では「全体的な計画」について、下記のように記載されています。
“幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び幼稚園教育要領との構成的な整合性を図った。”[注1]
現在の幼児教育では、幼児期の終わりまでに知識・技能・思考力・判断力・表現力などの基礎を身につけ、さらに学びに向かう力や人間性なども身につけていくことが望まれています。このような幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を実現するためには、幼児教育よりもさらに前の段階である乳児期からの保育が非常に重要です。
乳幼児期の保育をこども園や幼稚園の「全体的な計画」と同じような構成にし、保育から幼稚園などでの教育にスムーズにつなげるようにしたことが、「整合性を図った」という意味合いです。
先にも述べたように、乳児から保育園に入園するケースが増えているという社会的背景もあり、乳幼児保育と幼稚園などでの教育に整合性を持たせることの重要度はますます高まっています。
幼児期の終わりまでに育ってほしい姿などについての詳しい内容は、文部科学省が発表している幼稚園教育要領解説を見るとわかりやすいでしょう。
[注1]引用元:厚生労働省 保育所保育指針解説
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000202211.pdf
改定された保育所保育指針には、以下のような記載があります。
“改定前の保育所保育指針における「保育課程の編成」については、「全体的な計画の作成」とし、”[注2]
そのため、この文章だけを見て「全体的計画=旧保育課程」という解釈をする人も少なくありません。しかし、実際はこの2つはイコールで結ばれるものではなく、従来の「保育課程」は、「全体的な計画」の中に含まれる内容のひとつ、という位置づけになっています。
つまり「全体的な計画」は、旧「保育課程」の内容をすべて含んでいるだけでなく、さらに別のものも含んでいる、もっと大きな枠組みであるということです。子ども園や幼稚園ではすでに、全体的な計画を踏まえたカリキュラムマネジメントが浸透しています。
乳児期からの入園が増えた保育園における保育の重要性が以前よりさらに高まったことによって、保育園でも幼稚園などにならって保育計画を作成する必要がある、という要素が加わり、「全体的な計画」となりました。
[注2]引用元:厚生労働省 保育所保育指針解説
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000202211.pdf
「全体的な計画」は旧「保育課程」よりも大きな枠組みであり範囲が広い、と記載しました。では、具体的に旧「保育課程」と比べてどのような内容を追加すべきでしょうか?
大きなポイントは、年間計画などの長期的計画の見通しです。
子どもの家庭環境や地域の実態、保育時間の長さなどを考慮して、保育園の子どもが、年度末にどのような姿になっていることが望ましいのかという「目標となる姿」を考えたうえで、それを実現するためには年間を通じてどのような保育をしてどのような経験をさせるべきか、どのような保護者のサポートを求めるべきか、などといった全体的な視野で考えていきます。
こうした「全体的な計画」の作成においては、従来の「保育課程」よりもさらに、PLAN(計画)・DO(実行)・CHECK(評価)・ACT(改善)というPDCAサイクルの実践が求められます。
単に計画作成をするだけでなく、その計画をしっかりと理解したうえで実際に実行することが大切です。また、どのように実行したか記録を取ったうえで、計画や目標が達成できたかの評価をします。そこで改善が必要な点などが見つかった場合は、それを次の「全体的な計画」作成に反映し、よりよいものにしていく、というのが理想的な流れです。
もちろん、「全体的な計画」の作成もPDCAサイクルの実践も、保育士ひとりでできることではありません。
園全体の事業計画として共通意識を持ち、実行や評価なども個々の判断だけでなく園全体で取り組んでいく必要があります。
このように、旧「保育過程」の範囲だけにとどまらない「全体的な計画」が正しくできれば、保護者や社会に対する保育内容の説明がスムーズになるだけでなく、これまでよりもさらに子どもたちに寄り添った保育ができ、保育士自身も大きく成長できるでしょう。
「全体的な計画」は旧「保育課程」と同じものだと思われがちですが、実際には「全体的な計画」はより大きな枠組みといえます。この改定内容からもわかるように、子どもの成長に関して、より包括的な考え方が求められる社会に変化しつつあるのです。
保育士としても視野を大きく広げて成長できるチャンスでもあるので、「全体的な計画」についてしっかりと理解し、実践していきましょう。
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