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言葉にならない「声」を聴く。未来の保育者が学ぶ、子どもの意見の本当の聴き方

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言葉にならない「声」を聴く。未来の保育者が学ぶ、子どもの意見の本当の聴き方

「あなたはどう思う?」

私たちは、日々たくさんの対話の中で、相手の意見に耳を傾けます。
では、その相手が、まだ言葉をうまく話せない赤ちゃんや、自分の気持ちを表現するのが苦手な子どもだったら、どうでしょう。

2023年に設置されたこども家庭庁は、「こどもまんなか社会」の実現を掲げ、子どもの意見を尊重し、その最善の利益を第一に考えることを社会全体に求めています。これは、未来の保育者となる学生たちにとって、最も重要な使命の一つです。

先日、本校では日々の授業の中で「子どもの意見をどうやって聴くか」という、シンプルでありながら非常に奥深いテーマを扱う授業がありました。
今回はそんな授業の一コマをレポートします。

 

 

「聴く」ことの前に、まず「知る」こと

 

この日の授業は、いきなり「意見を聴く方法」を学ぶことから始まりませんでした。
まず投げかけられたのは、

「なぜ、私たちは子どもの声に耳を澄ませる必要があるのか」という問いです。

子どもたちは、一人ひとり異なる環境で生きています。
外国籍の家庭で言葉の壁に直面していたり、経済的な困難や、家庭内での複雑な事情を抱えていたりと、その背景は様々です。

このような「要保護児童」と呼ばれる子どもたちの存在を知り、
その社会的背景を理解することは、保育者にとっての第一歩。授業では、
具体的な事例を並べるのではなく、
子どもたちが置かれた状況に想像力を働かせ、保育者としてどのような支援ができるのか、その立ち位置を学生一人ひとりが考えました。

 

そして、その視点は自然と「保護者支援」や「子育て支援」へと繋がっていきます。
子どもを支えることは、その保護者を支えることと分かちがたく結びついているからです。
学生たちは、子どもと保護者を一体として捉え、地域社会の中でどう寄り添っていけるのか、議論を深めました。

 

言葉だけが「意見」じゃない

様々な背景を理解した上で、いよいよ授業はメインテーマへ。「言葉でコミュニケーションを取るのが難しい子どもの意見を、どうやって聴けばいいのだろう?」
いわゆる「子どもの意見表明」です。

 

赤ちゃんや、障害のある子どもたち。彼らもまた、一人の人間として豊かな感情や意思を持っています。保育者は、泣き声の調子、目の輝き、手足の動き、表情のわずかな変化など、言葉以前の「声にならない声」を全身で受け止めなければなりません。

 

それは単なる「観察」の技術ではありません。大切なのは、子どもが安心して自分を表現できる「安全基地」のような存在になること。そして、「あなたのことをもっと知りたい」という真摯な姿勢で向き合い続けることなのだと、授業は問いかけます。

 

私の「声にならない声」に耳を澄ます

この「非言語的な表現」をより深く理解するため、授業ではユニークなワークが行われました。臨床美術の一つである「美麗式(びれいしき)」を使い、学生たちが「今の自分の気持ち」を色画用紙を使って表現するのです。

 

ルールは、言葉を使わず、色画用紙を正三角形や円などの形に切り取って自由に組み合わせることだけ。

 

完成した作品を見ると、驚きの発見がありました。普段は明るくムードメーカーの学生が、どこか寂しさを感じさせる静かな作品を作っていたり、物静かな学生が、内に秘めた情熱を感じさせる力強い作品を生み出していたり…。

 

言葉や普段の振る舞いだけでは見えない、その人の本当の気持ち。このワークは、学生たちに「自分自身の声にならない声」に気づかせると同時に、「目の前の子どもたちも、きっとたくさんの気持ちを内に秘めているはずだ」という、かけがえのない視点を与えてくれました。

おわりに

子どもの意見を聴く。それは、未来をつくる仕事です。

本校の授業は、単に保育の知識や技術を教えるだけではありません。一人ひとりの子どもが持つ豊かな世界に敬意を払い、その小さなサインを見逃さない繊細な感性と、温かい心を持った保育者を育てることを目指しています。

 

授業の中学生たちが感じた戸惑いや発見の一つひとつが、いつか現場で出会う子どもたちの「声にならない声」を聴き、その最善の利益を守るためにつながっていくと願っています。

この記事の監修者
保育のコラム 編集チーム
保育のコラム 編集チーム

日本児童教育専門学校 講師
保育のコラム 他

保育のコラム 編集チームでは、保育士の方、保育士を目指している学生、社会人の方に、保育士のなり方や働き方、保育に関する情報を発信していきます。

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