保育士コラム

保育士が知っておくべき感染症対策!予防と対応のポイント

保育園は、小さな子どもたちが毎日元気に過ごす、にぎやかな場所。 その一方で、集団生活ならではの「感染症の広がりやすさ」も大きな特徴です。 インフルエンザや胃腸炎、さらには新型コロナウイルスなどさまざまな感染症が保育現場で課題となってきました。 保育士として働くうえで、感染症に関する正しい知識と、日々の予防・対応の工夫は欠かせないもの。 この記事では、現場で役立つ感染症の基礎知識や具体的な対策についてわかりやすくまとめました。 子どもたちの健康と笑顔を守るために、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
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子どもがかかりやすい感染症とは
保育園では、さまざまな感染症が毎年のように流行します。
それは、子どもたちは免疫が未熟で、手洗いや咳エチケットなどの習慣も十分ではないため。
ここでは、保育園で特に注意したい代表的な感染症と、その特徴を紹介します。
インフルエンザ
主に冬(12月~3月)に流行しやすく、38度以上の高熱、頭痛、全身のだるさ、筋肉痛などの症状が突然現れます。
飛沫感染が中心で、感染力が非常に強く、感染者の咳やくしゃみで周囲に広がります。手指やおもちゃなどを介した接触感染も起こるため注意が必要です。
出席停止期間の目安:発症後5日を経過し、かつ解熱後3日が経過するまで(就学前児に適用) |
※保育園では、一人の感染からクラス全体に広がることもあり、流行期には特に警戒が求められます。出席停止期間については、医師の指示や自治体の対応に沿って判断しましょう。
ノロウイルス・ロタウイルス(感染性胃腸炎)
嘔吐や下痢が主な症状で、特に冬場(11月〜3月頃)に流行します。
主な症状は、突然の嘔吐、下痢、発熱(ノロウイルスでは発熱がない場合も)。
経口感染(ウイルスが口に入ることで感染)で、感染力が非常に強いのが特徴です。わずかなウイルス量でも感染が成立し、嘔吐物や便の処理には特に注意が必要です。
園内での感染が拡大すると、子どもだけでなく職員にも影響が出て、保育運営に支障が生じることもあります。
出席停止期間の目安:症状(特に下痢・嘔吐)が治まり、普段通りの生活ができるようになるまで |
※法的な出席停止期間の規定はありませんが、感染力が非常に強いため、医師の判断をもとに慎重な登園再開が求められます。
手足口病・ヘルパンギーナ
夏(6月〜8月頃)に流行しやすいウイルス性疾患で、発熱や口内炎、手足の発疹が特徴です。
- 手足口病:口の中の水疱、手足の発疹、発熱
- ヘルパンギーナ:39度前後の高熱や、のどの奥にできる水疱・赤い発疹、食欲不振など
飛沫感染・経口感染・接触感染と感染経路はさまざまで、排泄物にもウイルスが含まれるため、おむつ交換やトイレ後の手洗いがとても大切です。
出席停止期間の目安:明確な基準はないが、発熱や口腔内の痛みなどの急性症状が治まり、普段通りの食事・生活ができるようになってから |
※多くは軽症で自然に回復しますが、まれに重症化する例もあるため油断は禁物です。症状が軽くても、他の子どもへ感染させる可能性があるため、登園前に必ず園と相談しましょう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
近年、保育園でも大きな影響を及ぼした感染症です。
季節を問わず年間を通じて発生します。
発熱や咳、倦怠感など多様な症状があり、重症化リスクは低いものの、集団生活では特に注意が必要です。
主に飛沫感染と接触感染。変異株によって感染力が異なることもあり、油断できない感染症です。
出席停止期間の目安:発症日を0日目として5日間経過し、かつ症状が軽快して24時間以上経過していること(2023年5月以降の厚生労働省の推奨基準に基づく) |
※症状が長引く場合や家庭内で高リスク者がいる場合は、さらに慎重な判断が必要です。
最新の情報は、自治体からの連絡もあわせて確認しましょう。
たとえば、冬場にインフルエンザが流行し、クラスの半数以上が数日間登園できなくなるといったケースも。
ノロウイルスによる集団感染で、数名の保育士も体調を崩し、園全体の運営に大きな影響が出た例もあります。嘔吐物の処理手順や消毒の見直しが急務となりました。
体調不良が見られた際は、無理に登園させず、医師の指示を仰ぎながら慎重に対応しましょう。
保護者との連携や園の対応マニュアル整備も、感染拡大を防ぐカギになります。
保育園ではなぜ感染症が流行るの?
保育園で感染症が広がりやすいのは、単に子どもが多いからだけではありません。
集団生活ならではの特徴や、子どもたちの行動特性が大きく関係しています。
ここでは、その理由を詳しく見ていきましょう。
- 集団で過ごす時間が長い
食事や昼寝、遊びの時間など、子どもたちは長時間を同じ空間で過ごします。そのため、飛沫感染や接触感染が起こりやすい環境です。
- 子ども同士の距離が近い
集団遊びやおもちゃの貸し借りなど、子ども同士が密接に関わる機会が多く、濃厚接触が増えます。
- なんでも口に入れやすい
特に乳児クラスでは、玩具や指を口に入れることが多く、唾液を介してウイルスや細菌が広がりやすくなります。
- 免疫が未熟
乳幼児は免疫力が十分に発達していないため、感染症にかかりやすい傾向があります。
- 衛生習慣が身についていない
手洗いやうがい、咳エチケットなどを自分で徹底するのが難しいため、保育士のサポートが不可欠です。
保育士が現場で実践できる感染症対策とは?
では、保育士として日々の業務の中でどのような感染症対策ができるのでしょうか。
ここでは、現場で実践できる具体的な予防策と、感染が疑われる場合の対応ポイントを確認していきましょう。
感染症予防の基本
◆ 手洗い・うがいの徹底
手洗いは感染予防の基本中の基本。
外遊びの後やトイレの後、食事の前後など、こまめな手洗いを心がけましょう。
- 流水と石けんで30秒以上かけて洗う
- 爪の間、手首、指の間もていねいに
- うがいも、口腔内を清潔に保つために有効
小さな子どもには、手洗いの歌や絵カードを使って楽しく習慣づけていく工夫も大切ですね。
◆ マスク・手袋の着用
- 保育士は原則マスクを着用し、感染拡大防止に努めます
- 嘔吐物や排泄物の処理時は、使い捨て手袋やマスクの併用が必要
- 子どもにマスクを求める場合は、年齢や発達段階に応じた無理のない対応を心がけましょう
◆ 室内の換気と加湿
- 1時間に1回以上の換気を習慣に
- 湿度は40〜60%を保つとウイルスの活性が抑えられるとされています
- 加湿器や空気清浄機の活用も効果的です
冬の乾燥期や夏の冷房使用時なども、意識的に換気と湿度の管理をしましょう。
◆ おもちゃや共用部分の消毒
- ドアノブ、テーブル、イスなどのよく触れる場所はこまめに拭き取り・消毒
- おもちゃは素材に応じて、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムでの定期的な消毒を
消毒液の希釈濃度や方法は、園のマニュアルや厚労省のガイドラインに沿って行いましょう。
◆ タオルや食器の共用を避ける
- ハンドタオル、コップ、食器などは子ども一人ひとり専用のものを使用
- 洗濯・消毒の管理も徹底し、取り違えが起きない工夫も大切
◆ 体調管理と毎日の検温
- 登園前・登園時の検温と健康観察を習慣化
- 保育中も、子どものちょっとした様子の変化(顔色、元気のなさ、咳や鼻水)に気を配りましょう
「ちょっと変かも?」と感じたときの気づきが、感染拡大を防ぐ第一歩になります。
感染が疑われる場合の対応
◆ 隔離スペースの確保
発熱や嘔吐など、感染症の可能性がある症状が見られた場合は…
- 他の子と接触しないよう、静かな隔離スペースで対応
- 保育士もマスク・手袋を着用し、必要に応じてフェイスシールドを使うことも
◆ 保護者への迅速な連絡
- 体調不良の子どもには速やかに保護者へ連絡を取り、早めのお迎えをお願いしましょう
- 医療機関の受診が必要な場合は、症状や経過をていねいに伝えることが大切です
◆ 嘔吐物や排泄物の正しい処理
- 必ず手袋・マスクを着用して処理を行います
- 処理後は使い捨て手袋の廃棄→手洗い・消毒の徹底
- 床や衣類に付着した場合は、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が推奨されます(適切な濃度で)
消毒の際は、十分な換気と安全管理を行いましょう。
感染症対策は、完璧を目指すのではなく、毎日の積み重ねが何よりも大切です。
保育士が「気をつけよう」と思って行動することが、子どもたちや保護者の安心につながります。
まとめ
感染症は、保育園という集団生活の場ではいつでも起こり得る身近なリスクです。
だからこそ、保育士一人ひとりが正しい知識を持ち、日々の予防を積み重ねていくことがとても大切です。
手洗いや換気などの基本的な対策をコツコツ続けること、そして「おかしいな?」と感じた時にすぐに対応できる力は、子どもたちの健康を守るだけでなく保育園全体の安心につながります。
子どもたちが元気いっぱい過ごせる保育環境を考えていきましょう。
日本児童教育専門学校では、「子どもの健康と安全」「子どもの保健」「子どもの食と栄養」など、保育の現場で欠かせない知識を、基礎からしっかり身につけることができます。
さらに、経験豊かな先生方による授業に加えて、体験型のゼミでは、実際の保育現場をイメージしながら学びを深められるのも魅力。
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日本児童教育専門学校 講師
保育の豆知識 他
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